レインレイン・ボウ

日経WOMANという半スイーツ半ビジネスなふいんき(なぜかry)な働き女子雑誌がありますが、一時それを気に入ってよく読んでたんです。
私自身は想定読者の上のほう(バリバリ働く総合職?)でもないし下(一般職だけどちょっと上昇志向も…?)でもないしはっきり言って活用できる内容は多くなかったのですが
そこに「妹たちへ」ていう連載がありました。
アラサー手前の悩める女子へやや年上の「なにものかになっている」先輩女性たちの悩める時代についてのエッセイなんですけど
人によってはちょっと説教臭かったり、逆にそれ単なる自慢じゃねーの?ってなってたり、そんなきれいごとじゃねーだろー!ってかえって反発されちゃいそうな(たとえば某大河原作者さんの回は個人的には半笑いでした)のですがそれはそれで面白く読んでおりまして。

レインレイン・ボウ (集英社文庫)

レインレイン・ボウ (集英社文庫)

「レインレイン・ボウ」を読んで、そのエッセイを思い出したのです。
年の頃は23-26才のさまざまに働く、あるいは子持ち専業主婦だったりニートだったりする女子たち。
彼女たちをつなぐ亡くなった友といなくなった友が7つのストーリーをつないでいきます。
高校時代という輝けるひととき(もちろん輝くばかりではなかったにせよ)を共有した女性たちが日々悩み傷つきそれでも前へ進む、そのいとなみがひとつひとつ丹念につむがれ、最後に謎は解かれるものの、それでも世界はほとんど変わらずに回っていく。
作者の彼女らそれぞれにさしのべられている冷徹でありやさしくもある視線。

月曜日の水玉模様 (集英社文庫)

月曜日の水玉模様 (集英社文庫)

正直、前作(といってもいいのかな?)「月曜日の水玉模様」は私の中では寓話、おとぎばなしでした。
高卒の一般職丸の内OL、それでいてとても頭が切れてさっそうとした女性。
女性、働いている、それ以外は何一つ自分とは共通点が感じられないステキな探偵のささやかな冒険譚に舌を巻きはしてもそれほど共感することはできなかったのです。
それはワトソン役の萩くんにしてもおなじこと。あんな男子がいるとはとてもじゃないけど思えないw
もちろん加納作品は大好きで全部揃えるつもりではありますが、それでもどちらかというと男性に喜ばれそうな、はっきり言うとキャラ萌え、の小説だなあと思っていました。
本格ミステリにおいてそういうキャラクタ造形って大事だと思いますし、それだけにとどまらない繊細な記述はなによりも加納作品の魅力なのですが、「ななつのこ」を読んだときのあたたかさと驚きに比べると何となく遠いものを感じていたのですね。
だけど、この「レインレイン・ボウ」は違う、私(たち)のためのお話だ、一読してそう思いました。

ここは天国じゃないんだ かといって地獄でもない
いいやつばかりじゃないけど わるいやつばかりでもない

なんて歌を脳内で歌いつつ読んでみたり。
そういうお話が本当にどこかに転がっていてもおかしくない、それなら自分も顔を上げてまた新しい一歩を踏み出そうじゃないか
なんてことを思う一冊でした。


もし、これを読むあなたがちょっと仕事や日々の生活に疲れていたり、悩んでいたり、足踏みをしているなら。
ちょっと休んで、この本を手に取ってみてもいいかもしれません。
効果のほどは保証しませんが、短編の連作ですからあわなくてもそんなに時間のロスにはならないと思いますよ?