有限と微小のパン読了。(ネタばれぎみ感想文)

で、なんでパンなわけ?
と、読み終わった後に考えてしまうのが森ミステリィらしさなのかもしれません。
毎回エスプリ、というか凝った章立て、サブタイトル、引用などで楽しませて頂いてるのですが
この作品では各章の英語タイトルがすべてPan---でした。
目次を開いた時から頭の中はクエスチョンマークでいっぱいです。
単なる言葉遊びともとれるし、深読みしたくもなるし、と考えている*1時点で
作者の術中にはまりきっているのかもしれません。



正直、ストーリィの収束、いや「四季」につながる拡散自体はあまり興味がもてなかった、です。
それは「四季」が既に出ているから、と言うのが理由のひとつかもしれません。
新刊を書店で買い求めて読む、と言う読書スタイルを取らないために
単体の本で得られる興奮を逃してしまったのは残念だとは思います。
が、それよりも気になったのはサブタイトルです。
1作目の「すべてがFになる」(英題:The Perfect Insider)を読んだ人が
10作目の「有限と微小のパン」(英題:The Perfect Outsider)を読みますよね。普通。
「F」を読み終えたときは、それはもう衝撃的でした。タイトルを見直して、もう一度衝撃。
「やられた」と思ったのです。


しかし今回は。
S&Mシリーズ最終作ということで英語タイトルもきれいにまとまっているな、とは思いましたが
読み始めて、だんだんトリックが見えてきたように思いました。
だって、答えがそこにあるような物ですから。
そうすると、単にミステリとして読もうと思う人にはつまらないんじゃないかと。
私だけが見えていたわけではないと思うのです。
けれども、テーマパーク内で起こる不可解な事件の謎が解けたときに、
このOutsider=犀川(と萌絵たち。だと複数形か)のことだったのではないかと思ったわけです。
そこに思い至った瞬間が興奮の最高潮でした。
やっぱり「やられた」と。
もう後はボーナストラックというか消化試合というか。


ただ、犀川先生と西之園萌絵嬢がどうなるのかを気にしている人たちには中途半端なエンディングでしたね。
「今はもうない」位の頃の方が客観的に見た二人の仲の盛り上がり度合いは高くなかったですか?
あ、それともそのへんが「四季」で描かれているのでしょうか。
んー。商売上手ですね!(違


Vシリーズにはあまり手を付けていないので、(この辺でも彼らは出てくるんですよね?)
またぼちぼち読んでいこうと思います。。

*1:単純に考えればpanoramaのpan,俯瞰すると言うこと?