もやもや→すっきり(大学院はてな)

実家ではいまだにネット接続可能なパソコンがありません。
あるのはその昔女子高生だった私が購入したFM-TOWNSIIのみ(笑)
テレビもオリンピックに占拠され、情報源は必然的に新聞です。


そんな中で見つけた記事。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20040816k0000m040140000c.html
「遺伝子制御:特殊なRNAで乳がん増殖抑制 産総研と東大」が見出しです。

RNAは、DNAが持つ遺伝情報をたんぱく質に伝達するのが主な役目。最近開発された特殊なRNAは、遺伝情報の伝達を阻害する働きがある。研究チームはこの働きに着目。がんの転移などに関与する因子を標的とする特殊なRNAを設計した。これをヒトの乳がん細胞核内に注入すると、RNAを作るたんぱく質やDNAが化学反応を起こして変形。RNAが作られにくくなり、結果的に細胞増殖が抑制された。今回、細胞核内での遺伝子制御が可能になったことで、がん遺伝子や悪性ウイルスの生成を根本から防ぐことが可能になったという。


んー。すっきりしない!
わかりやすいようでわかりにくい。
これを書いた記者さんは、読者がこの文章で理解できると思って書いているのですよね。
へぼ院生は3回読み返しました。


まず、「特殊なRNA」ってsiRNAのことでいいの?
それを「注入」(この表現もひっかかるけどいいの?細胞内に入れるのに何を使ったのかな?)したら「変形」した。
コンフォメーションの変化をおこす「因子」を標的としたわけですね。<このへんでちょっと分かってきた。
で、「結果的に」細胞増殖が抑制された。


…でもタイトルは「特殊なRNAで」「がん増殖抑制」。
なんでネイチャーなのそれが。と思っちゃったわけです。
RNAiでガンの増殖が抑えられたのはそんなにすごいことなのか。
今までに分かっている増殖を制御する遺伝子なんていくつもあるでしょうに。


プレスリリースをよんで納得しました。(いえ。ほんとは某所でこのページを知りました)
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2004/pr20040816/pr20040816.html
目的遺伝子そのものではなく、CpGアイランドをターゲットにしていたのですね。
DNAメチル化によって遺伝子の発現を押さえ込んでしまった。
そゆことだったんですね。
このページの図がわかりやすくて、今まで私が聞きかじっていたRNAiうんぬんがどういうものだったのかもよく分かりました。
なるほど、そりゃNatureですね。

このRNAiのプロセスにおいて小さなRNA (small interfering RNA; siRNA)は、キーとなる分子でありRNAi実行蛋白質(RNAI-induced silencing complex; RISC)と複合体を形成して標的mRNAを分解する。一方、植物や酵母では、siRNAがヒストンおよびDNAメチレーション(メチル化)を誘導することが知られていた。

ということで、以前のNatureに出してretractionした論文以後(でもないだろうけど)、T先生はmicroRNAの方だけではなくメチル化の制御にご興味をお持ちだったことが分かりました。
ともあれ勉強になりました。
相変わらずambitiousでいらっしゃるようで何よりです。

今後はたんぱく質が変形する詳しい過程や、このRNAがほかのがんにも有効か調べ、日本の製薬会社に売り込みたい

普通、こういうの自分では*1いわないですよね。かっこいい(わらい

*1:もちろん企業人でもいらっしゃるからでしょうけど