池袋ウエストゲートパーク
- 作者: 石田衣良
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/07/10
- メディア: 文庫
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猥雑な空気や犯罪や切れる(ダブルミーニングで)少年たち。
テンポの早い文章、シャープな比喩、一人称、体言止め、ハードボイルド。
これがリアルな都市小説、ってものなのでしょうか。
リアルな池袋といえば小学生の頃におのぼりさんで行ったサンシャインビルと水族館ぐらいしか知らない私には、「探偵」が出てくる現代物の海外ミステリと大差なく感じられました。
二作目(少年計数機)ではページ頭に登場人物紹介があったけど、これもそれっぽい。カバーの折り返しに印刷してあればカンペキ。<それはハヤカワや創元では…
お話としてはもちろん面白かったです。ドラマ化されたのもうなずける。
でも読むのがつらい話もありました。
たとえば「エキサイタブルボーイ」。
マコトの言うとおり「話としては悪くない」とは思いましたが、読後の救いのなさといったら…夜中にうなされそうな気がしました。
ひどすぎる。
現実にありそうで、むしろ現実のほうがはるかにひどく、救いのない出来事。
ただ、それを傍観者である軽やかで冷静なマコトの視点から描かれているという、そのワンクッションでなんとか話を読み通せたのかもしれません。
他の方が何を求めて本格ミステリを読まれるのかは分かりませんが、少なくとも私自身は現実の人間の起こす犯罪や人間そのものの醜悪さから目をそむけ、逃避する時間を得るために本格ミステリを読んでいるような気がします。
密室、探偵、美しい論理から導かれる解決とそれがもたらすカタルシスは普通ならば、いや「リアルな世界」ならばありえないもの。
ジャンル的にはファンタジーと一緒、なのかもしれません。森博嗣なんか特に(^^;
そんなわけで、私の求めるミステリとはちょっと違っていました。
私自身にとっての石田衣良という作家の価値が、それによって減じるわけではないですけれど。